2015日展会場にて

2015日展会場にて

改組新第二回日展特選受賞にあたって

寺 坂 昌 三

この度はこのような栄誉を賜り、誠にありがとうございます。

正筆会会長黒田賢一先生をはじめ、これまでご指導、ご支援を頂きました多くの方々に心より感謝申し上げます。

受賞の知らせを頂いて以来、驚きと感激が交錯する時を経て、責任の重大さをひしひしと感じております。

十一月十九日、国立新美術館にて開催された表彰式では、ご来賓並びに役員の先生方のご臨席のもと、奥田小由女日展理事長様より直接表彰状を手渡していただき感激いたしました。

今回の作品は島木赤彦の短歌二首を題材とし、しなやかさを念頭に、穂先の動きを意識しながらゆっくり線を引きました。中ほどには十分に墨を盛り込み、それに続く渇筆部と合わせて山場としました。冬枯れの木立の中に鳴り渡る鐘の音。私はそこに希望の響を感じました。荘厳で透徹な歌の情趣も制作意欲を高めてくれました。

改めて実感したことの一つは、時間をかけてじっくりと作品を仕上げることの大切さです。締切に追われ、ある程度の手ごたえを感じたあたりで時間切れになってしまいがちですが、今回はそこから一枚、もう一枚、一日、もう一日と書き続けることで、微かではありますが書いている自分自身が目覚めていく感覚がありました。書き込むことで、それまでの自分から新しい自分へと進むことができるのだと思います。

もう一つは周囲の方々への感謝です。こうして書を続けて来られたのも、ご指導いただいてきた先生方は勿論のこと、切磋琢磨している仲間、家族等、支えてくださる多くの皆様方の存在があってのことです。日々お礼を申し上げるべきところ、なかなかそれができておりません。この機に感謝の気持ちを伝えたいと思います。

これからはより一層精進し、書の技を鍛え、自己を磨くと共に、微力ではありますが書の普及発展のために努力致します。今後ともご指導、ご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

2015日展表彰式

2015日展表彰式